競走用あるいは繁殖用のサラブレッドの国際交流が、交通手段の急速な進歩と共に、益々活発化したことによって、主要なサラブレッド生産国間のサラブレッド資格の一部の齟齬、その他血統登録手続きなどを国際的に調整し、統一する必要が生じた。
1976年にWeatherby 社が主催して国際血統書会議が開催されサラブレッドの定義、サラブレッドStud Book の登録条件等について審議が行われた。
1979年に、世界を6地域(アジア地域、オーストラリア・ニュージーランド地域、ヨーロッパ地中海地域、北米地域、南米地域、南部アフリカ地域)に分割し、地域委員15カ国で組織される
国際血統書委員会となり、引続き審議が重ねられたが、サラブレッドの定義の定め方については難航した。
1984年に至り、委員国相互でStud Book を審査し、承認しあうことによってサラブレッドの国際的定義を次のように定めることが合意され、「競馬と生産に関する国際協約」に収録された。
即ち、「当該馬は、
国際血統書委員会が承認した血統書(Stud Book)に1980年1月1日以前に登録されている父馬および母馬の交配による産駒であるか、またはこのように登録された馬に、その血統のすべての系統で遡れるものでなければならない」というものである。
地域委員国が所属する地域毎に、血統書会議(または委員会)を組織させ、
国際血統書委員会が進めているサラブレッドの登録とStud Book 管理の国際標準化を徹底させ、更に委員国による各地域内のStud Book について承認のための指導にあたらせ、10件以上の国のStud Book の国際承認を行っている。
血統登録の厳正を期すため、この委員会発足当初から併せて審議されていた血液型による親子鑑定を登録条件に取り入れることを義務付け、各国の血液型研究所の検査能力の国際標準化とそのレベル維持のためのシステムも定められている。
人工授精について、人工授精の禁止を解除するか否かについては、
国際血統書委員会でもたびたび議題になっており、血液型による親子鑑定、あるいは最近ではDNAの利用も徐々に用いられる方向に進んでおり、故意または錯誤による親子関係の取り違いの防止という意味はなくなってきている。
しかしながら、現在の血統書委員会の見解としては、特定の種雄馬の産駒が集中的に増え、ただでさえ狭いサラブレッド産業がますます特定の血統に集中する恐れがあり、それによって近親交配の弊害、体質の虚弱あるいは、疾病、故障などの多発が危惧され、いったんこのようなことが生じると、サラブレッドという品種の存続に重大な危機が生じるという見解が多数を占め、もし解除するのであれば、国際的な合意がなければ踏み切れないというのが依然として委員会の公式認識である。
個体識別の表示方法についても記録する事項および用語の国際的統一がはかられつつある。
非サラブレッドと称される、サラブレッド資格のない馬から、サラブレッドへ昇格する手続きも「当該馬のための交配を含めて、上記定義のサラブレッドとの連続8代の交配記録が十分に証明できる産駒でなければならない」と定められている。
この昇格についても、条件を満たすと当該馬の出生国の血統書統轄機関が判断した各馬1頭毎にサラブレッド連続8代交配があったことを公式記録によって示すとともに、当該馬およびその祖先がサラブレッドの競走に出走して、サラブレッドと同等の競走成績をあげていると確認できれば、その国が所属する地域の血統書会議(または委員会)に先ず申請し、そこで承認が得られれば
国際血統書委員会へ推薦して、委員会全員の賛成が得られなければならない。